溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「あれ、なんの集まりかな」
社長がふと立ち止まって、少し先で子供が集まっている屋台を指差している。小さな女の子ばかりが賑やかにしているそこは、おもちゃのアクセサリーを売っていた。
「こういうの、私も親に買ってもらったなぁ。母親の持ち物が羨ましくて、こっそり口紅を塗って怒られたりして……」
一緒にしゃがんで、プラスチックでできた宝石の付いた指輪やネックレス、ブレスレットを手に取って眺める。
とても軽くて青いプラスチックが、本物の宝石に思えたあの頃が懐かしい。
「白埜さんの小さい時、可愛かったんだろうね」
「……子供の時は、みんな無条件に可愛いものですよ」
「今日の白埜さんも、最高に可愛いよ」
不意に褒められて、持った指輪を落としそうになった。
彼はかかってきた電話に応じながら、少し離れたところへ歩いていく。後をついて、飲み物を買ってくると他の屋台を指差し、彼から離れるのが救いだった。
今日も、ってどういう意味だったんだろう。
つまり、昨日もその前もってこと?
いやいや、落ち着け私。
彼はそういうことを簡単に言うタイプじゃない。女性を喜ばせては、反応を面白がって……。
悪趣味だって言ってたのは自分なのに、今はそうじゃないと思いたくなるなんて勝手だけど、どうしても信じたくなる。
片想いが、ちゃんと報われると願うように。