溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
目の前にブルーメゾンがそびえる。また屋上で話すのだとしたらこんな夜にはぴったりだ。
周りを遮るもののない高層ビルに吹きつける夏風は、どんなに気持ちがいいだろう。
私の緊張や、夜空からはみ出そうなほどの想いを届けてくれるだろうか。
地下に潜っていく車が、決められたところで停められた。
週末の21時過ぎ、このビルが賑わっているのはレストランフロアくらいだと思う。
「忘れものはない?」
「大丈夫です」
施錠に反応したウインカーが点滅して、私たちを見送る。
社長に次いで乗り込んだエレベーターは、Rのボタンが押されると思っていたのに、彼が選んだのは社長室のあるフロアだった。
「この時間に会社に入ることがないので、悪いことをしている気分がします」
「学校に忍び込むみたいな感じ?」
「そうです、懐かしいなぁ。警備員に見つかって逃げ出したりして」
「千夏ちゃんもそんなことしたんだね」
「社長は?」
「俺もあるよ。運よく見つからなかったけど、あれって見つかるかもしれないスリルが醍醐味だから、ちょっと拍子抜けしたかな」
社長室のセキュリティを解除してからドアが開けられ、人感センサーで入口側の明かりが点いた。
彼は施錠をしてから、書斎と反対側にあるクローゼットへと入ってしまった。