溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「千夏ちゃんも来て」
間口は書斎と変わらないけれど、中は思っていたよりもずっと広い。路面店のセレクトショップのような雰囲気がとても洒落ている。
急な来客に備えていると思われる、カバーが掛かったスーツが3着。その下に設けられた小さな棚には革靴が行儀よく3足並んでいる。どれも木型が入っていて磨きも万全。ちゃんとメンテナンスが行き届いているのは一目瞭然だ。
真紅と黒革のスツールが2つあるのは、着替える時なんかに使うのだろうか。
壁が姿見になっていて、映りこむ自分が思っていたより幸せそうな笑みを浮かべていて、なんだか恥ずかしくなった。
クローゼットの奥は右に折れていて、その先へ進む彼を追いかけた。入ったことのないこの空間にも、彼の香りが漂う。
「何か取りに来たんですか?」
「違うよ。今日は帰すつもりないって言ったでしょう?」