溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「なんで同じのがあるのよ、千夏の手元に」

「いつも色々と条件付きの広告とか取材を受けてるから、お礼にって」

 適当な理由をつけて隠した。社長と特別だなんて思われるのは不本意だ。


 私を社長は“千夏ちゃん”と呼ぶけれど、仕事で頻繁にやり取りする社員はみんな同じようなものだ。もちろん、客先の前ではきちんとしているから問題はなかったはずが、こうなってしまうと途端に都合が悪くなる。


 社長の名前呼びが、特別なものに思えた新入社員の頃。

 実際にその立場になった今。

 別にこれと言って変わったことはない。仕事に慣れて、給与も上がって、安定した生活が送れるようになったくらいだと思う。


 だけど、これからは記事を見た人間は、1歩進んだ関係だと勘違いしてしまうかもしれない。


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