溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「現在32歳になられましたが、ご結婚の予定は」
「今のところないですね。仕事ばかりしていますからね」
「葛城社長ならいくらでも選べますものね……本当に特別な方はいらっしゃらないのですか?」
社長が内容が変わっていると察して、私に視線を向けた。
時々いるんだよなぁ、こういう記者。本気で社長に興味を持ったからって、これじゃ公私混同の記事になりかねない。
「失礼します。申し訳ありませんが、お聞きしていた内容にはないものですので、控えていただけませんか」
ボイスレコーダーで録音していようと、掲載する写真を撮っていようと中断するのが私の仕事でもある。
「私は構いませんが、どうも広報がNGみたいで。ごめんね、悪く思わないで」
大きくて綺麗な手を合わせ、ウインクしながら謝る彼に、またしても記者が頬を染める。
って、それじゃ私が悪者みたいじゃない。
……別にいいけど。ビジネスですから。
「――それとも、君が結婚する?俺と」
また、いつもの悪い癖。
彼はすぐに「結婚」をぶら下げるのだ。
至極冷静、真面目くさった顔で。