溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「現在32歳になられましたが、ご結婚の予定は」

「今のところないですね。仕事ばかりしていますからね」

「葛城社長ならいくらでも選べますものね……本当に特別な方はいらっしゃらないのですか?」


 社長が内容が変わっていると察して、私に視線を向けた。

 時々いるんだよなぁ、こういう記者。本気で社長に興味を持ったからって、これじゃ公私混同の記事になりかねない。


「失礼します。申し訳ありませんが、お聞きしていた内容にはないものですので、控えていただけませんか」

 ボイスレコーダーで録音していようと、掲載する写真を撮っていようと中断するのが私の仕事でもある。

 

「私は構いませんが、どうも広報がNGみたいで。ごめんね、悪く思わないで」

 大きくて綺麗な手を合わせ、ウインクしながら謝る彼に、またしても記者が頬を染める。
 って、それじゃ私が悪者みたいじゃない。

 ……別にいいけど。ビジネスですから。



「――それとも、君が結婚する?俺と」

 また、いつもの悪い癖。
 彼はすぐに「結婚」をぶら下げるのだ。


 至極冷静、真面目くさった顔で。


< 3 / 251 >

この作品をシェア

pagetop