溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「千夏ちゃん、これ預かっておいてくれるかな」
取材が終わり、社長室で2人になった途端、記者に渡された名刺を私によこした。
裏面を見れば、ご丁寧にプライベートと思われる携帯の番号が書いてある。
「本日の外部取材は今の1件のみです。社内誌のインタビューについては、秘書課と時間調整いたしますので」
「そうしてくれると助かるよ」
葛城亜緒、32歳。
大学在学中に美容商社『株式会社ブルーメゾン』を起業。以来、牽引し続け、5年前に一部上場を果たした。
その美しさも相まって、常にメディアの注目を集める若手社長の1人。
世間が想像する“社長のイメージ”を大きく分ければ、威厳全開タイプと人当たりカジュアルタイプになるだろうけど、うちの社長はどちらでもない。
何を考えているのか分からない、ミステリアスな人というのがしっくりくる。