溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「お疲れさまです。白埜です」
「忙しい時にごめんね。フラッグ出版の件、写真差し替えなかったの?」
「……ええ、やっぱり社長がお気に召されているのでしたら、あのままがいいと判断しました」
「そうなんだ。ありがとう、助かるよ」
小さなことでも変化があれば見逃すことなく連絡や相談をしてくれるから、社内の風通しはいいほうだ。
おかげで、予期せぬ噂が立てば、あっという間に広がってしまうけれど。
今日も受けた光を取り込んで、眩く輝く鳥さんは何を思うのか……何も思ってないか、置物だし。
受話器を置いてすぐに外線が鳴り、反射的に応答した。
「ブルーメゾン、広報部です」
「お世話になっております。フラッグ出版の桃園と申しますが、白埜さんはいらっしゃいますか?」
「私です。先日は色々とお気遣いをありがとうございました」
「いいえ、こちらこそ。横野から写真の差し替えをしなかったと聞きまして、今日はそちらにお伺いできそうにないので、電話で失礼と存じておりますが謝罪させていただきたく、お話しております」
「ご丁寧にありがとうございます」
低くてビターな声色は、大人の男を思わせる。
初めて会ったあの日、メリハリの効いた服装の桃園社長が浮かんで、胸の奥が少し浮きそうになるのを抑えた。