溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

 結局、人は見た目が100%じゃない。マイナスイメージで見られがちな人だって、実際はとても誠実で温かい心を持った人だっている。


 元カレは最低だった。
 誰からも信頼を得ていた真面目な人だったのに、私の大学時代の友人と浮気をした挙句、私を振って向こうを選んだ。
 それからというもの、恋愛から遠退いている。ドキドキするような人に出会わなかったから仕方ないと思うし、意気込んで相手を探すのもらしくない。



「白埜さん、これもお願い」

「承知しました」

 業務外の案件をぼんやりと考えていたら、葛城社長が目の前に現れて、思わず声が上ずってしまった。


 社長は、私生活と仕事の境があるのかも知らない。
 生活感がなく、華やかで上品な葛城亜緒という人は、その表情から色々を読み取まれないようにしている気がしてならない。
 そういう人だからこそ、私が知り得るのはごく表面的な情報に尽きる。


 桃園社長は、見た目は派手だけど、信用があるから社会的地位も得ているのだろうし、まだ知り合って間もないけれど、1つも不快に感じることはなかった。
 これから、色々知っていけるんじゃないかって、そんな“隙”を見せてくれるのだ。


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