溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 街を桜や新緑が彩り、吹き抜ける風も優しさを乗せるようになった4月。

 今日も社内は慌ただしく賑やかだ。
 新入社員を交えた取材が入っていて、アイドル顔負けの熱視線を浴びながら、社長が準備が整った大会議室に顔を出したから。


 世間の社長と同じ立場なのに、容姿が整っているだけ扱いが変わり、言動に共感を得てしまうのは彼の人柄でもある。




「皆さん、お疲れさまです」

 社長が挨拶をしただけで、新卒女子たちが嬉しそうに笑みをこぼす。
 珍しくスーツを着ているのは、研修中の彼らに合わせているからだろう。


「今日は取材におつき合いいただきますので、先にいくつか注意事項をお伝えしておきます。守れない人は社内の秩序を乱す人間と評価されて当然ですから、気を引き締めて臨んでください」

 クールなポーカーフェイスが凛々しく仕事モードを前面に出すと、あっという間に空気が変わった。


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