溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

 社長と新入社員の対談形式で進んだ取材も終盤になり、集合写真の撮影時には彼の隣を狙う争奪戦が静かに繰り広げられ、女同士の戦いがすでに始まっているのを見てしまった。



「お疲れさまでした」

「さすがにちょっと疲れるね、若さってすごい」

「社長だってまだまだお若いはずですが」

「とはいっても、20代前半の勢いには押されてしまうよ」

 ネクタイを解き、上着をハンガーに掛けた社長は、長い脚を組んで椅子に座った。



 私をじっと見つめながら、真っ白なYシャツのボタンを1つずつ片手で外していく。


「お着替えされるのでしたら、一旦外します」

「いいよ、別に」


 ……なんですか、この空気。
 艶かしさを出されても、無反応しか返せませんが。

 しれっとYシャツを脱ぎ捨て、肩甲骨が綺麗に浮き出た背中を見せつけられたら、興味がなくとも脈が乱れているのが分かる。

 一応、異性ではある。気にせずにTシャツとカーディガンを纏った彼は、私を特別に思っていないのだろう。


 桃園社長が言っていたことは、きっと的外れだ。
 私に置物を渡したのは、本当に貰い手がなかったからに違いない。


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