溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「見て、ミドリーヌの最新号買ってきたんだ」

「さすが乃利子」


 ミーハーな彼女たちの視線が、一点に集まる。
 乃利子が買ってきた雑誌は、フラッグ出版のファッション誌だ。


「やっぱ、ミドリーヌって超可愛いね」

「こんな細いのに、たくさん食べるとか本当だとは思えない」


 私の携帯事情なんてあっという間に忘れ去られ、彼女たちはミドリーヌこと専属モデルの雨賀 碧(あまがみどり)の話題で持ちきりだ。



「……結婚特集とか、見れるときとそうじゃないときがあると思わない?」

「分かる分かる」

「乃利子は彼氏いるからいいよ。私なんてこの前別れそうになったんだから」

「でも結局上手くいってるんでしょ?」

「どうなんだろうね。結婚するかって聞かれたら、すぐに頷けないのが切なくて」

「千夏、聞いてる?」

「うん」

「千夏も、次は結婚前提の彼氏がいいでしょ?」

「……相手によると思う」


 結婚したいかどうか、このところ考えてなかった。
 相手もいないのに、気持ちばかりが夢を見ているようで、現実味に欠けていたから。


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