溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
遮るもののない高層ビルに射しこむ陽光が、ブラインドの模様を床に作る。
夕方、外出先から戻ってきた社長を捕まえて確認を進めてもらう間、いつ見ても隙のないその横顔にぼんやりと焦点を合わせた。
「ここ、少し直せますか?」
赤ペンを持った社長が、少し離れて待っていた私を手招きする。
「商品のことを、もうちょっとだけでいいから控えめに紹介する文章にしてもらって。これだとヤラセ感が出ちゃうかもしれない。実際、この子が愛用しているわけだから、もっと現実的な感想をもらえるように言っておいてください」
「承知しました。フラッグ出版さんにすぐ掛け合ってみます」
「それと、モデルさん……雨賀さんの服装が当日どんな感じか、分かり次第連絡が欲しいな」
「はい」
モデルにはスタイリストがいるけれど、葛城社長は自分でコーディネートしている。
お洒落だし、高価なものも自然に取り入れていてまとまりがいい服装をしてくれるから、広報としても大助かりだ。
「白埜さんも、当日は立ち会ってくださいね」
「もちろんです」