溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「この靴と、こっち。どっちが合うと思う?」

「いまお召しになられている靴でいいと思いますよ?葛城社長」

 社長は私に聞いているのに、碧さんが横入りしてきた。


「そうですか。ありがとうございます。白埜さんはどう思う?」

「……この紐の色が気になっていらっしゃるのでしたら、もう片方のものがバランスよく映るかもしれませんね。雨賀さんのご衣裳との相性も、カジュアル感が出過ぎなくてよろしいと思います」

「じゃあ、そうしようかな。相談に乗ってくれてありがとう」

「どういたしまして」


 用が済めば、スッと下がって立ち位置に戻る。

 社長が履き替えた靴は、秘書にあとで渡しておこう。高価なものだから、人の手で管理してた方がいい。



「相変わらず、ケンカしてるの?」

「そういう事ではないと思います。私が望んだことを叶えているだけかと」

 桃園社長が小声で話しかけてきた。


「千夏ちゃんって、本当は呼びたいんじゃないかな。彼は」

「どうでしょうね。ここしばらくは、白埜で呼ばれていますから」


 誰も私と桃園社長の関係には気づかないまま取材が始まって、幾度もフラッシュの音がする。


< 66 / 251 >

この作品をシェア

pagetop