溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「この靴と、こっち。どっちが合うと思う?」
「いまお召しになられている靴でいいと思いますよ?葛城社長」
社長は私に聞いているのに、碧さんが横入りしてきた。
「そうですか。ありがとうございます。白埜さんはどう思う?」
「……この紐の色が気になっていらっしゃるのでしたら、もう片方のものがバランスよく映るかもしれませんね。雨賀さんのご衣裳との相性も、カジュアル感が出過ぎなくてよろしいと思います」
「じゃあ、そうしようかな。相談に乗ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
用が済めば、スッと下がって立ち位置に戻る。
社長が履き替えた靴は、秘書にあとで渡しておこう。高価なものだから、人の手で管理してた方がいい。
「相変わらず、ケンカしてるの?」
「そういう事ではないと思います。私が望んだことを叶えているだけかと」
桃園社長が小声で話しかけてきた。
「千夏ちゃんって、本当は呼びたいんじゃないかな。彼は」
「どうでしょうね。ここしばらくは、白埜で呼ばれていますから」
誰も私と桃園社長の関係には気づかないまま取材が始まって、幾度もフラッシュの音がする。