溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 無事に取材が終わり、碧さんが社屋を去ったあとは異様に静かに感じる。
 鳴り響く外線の音がやけに大きく聞こえるほど、彼女を見た社員はその余韻に浸っているようだ。



 一方、私は。

 さすがに社内で2カラットのダイヤモンドリングを突然着けはじめるわけにいかず、ありがたく頂戴してバッグにしまってある。



 さっき言われたことって、プロポーズなのかと考えてしまう。
 重い理由はないって言ってたから違うと思うのに、未来の時間とかなんとか……。




「どうした?千夏」

「はい、なんでしょうか」

 後ろの席に座っている先輩女子に顔を覗かれ、すかさず塩対応女子に戻る。


「隠してもムダだよ?何かいいことがあったね?」

「……ありません。碧さんがとても美しかったので惚れ惚れとしてしまいましたが」

「千夏、モデルに興味なかったくせに。まったく嘘が下手ね」


 唇の形が不格好になってしまう。

 嬉しくて、たまらないから。


 こんな幸せなことが待ち受けているなら、4年前の失恋も無駄じゃなかったってことだ。



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