溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「ぶっちゃけ、千夏は社長が気になってるんじゃ」
「ないからね。間違っても社長だけはナシ」
同期の乃利子、里美、春華は揃って社長のファン。
みんな部署は別だけど、時間があればこうしてランチを一緒にとったり、飲みに出たりする。
「あんな人、モデルか芸能人くらいのレアな存在なんだよ?それがこんな身近にいるんだよ?」
確かに、社長は稀有なタイプだと思う。
高身長、高学歴、高収入。さらに性格も穏やか。いつだって丁寧な話し方をするけれど、相手に堅苦しさを感じさせないのは人柄があってこそだと思うし……。
「そうでしょうね、あんな人がその辺にゴロゴロいたら迷惑だわ」
「千夏ちゃんこわーい」
彼女たちの言いたいことがわからないでもない。でも、私は本当に何とも思っていない。
冗談で結婚をぶら下げて、相手の反応をうかがうような男は好きになれないのだ。
「とにかく、私は社長に興味の欠片もありません!」
きっぱりと言い切った私の視界3メートル前方に、社長の姿を見つけて小さくなる。
絶対に聞こえていたはずなのに、いつだって彼はポーカーフェイスだ。
気に食わないほど、完璧な。