溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「ぶっちゃけ、千夏は社長が気になってるんじゃ」

「ないからね。間違っても社長だけはナシ」

 同期の乃利子、里美、春華は揃って社長のファン。
 みんな部署は別だけど、時間があればこうしてランチを一緒にとったり、飲みに出たりする。


「あんな人、モデルか芸能人くらいのレアな存在なんだよ?それがこんな身近にいるんだよ?」

 確かに、社長は稀有なタイプだと思う。
 高身長、高学歴、高収入。さらに性格も穏やか。いつだって丁寧な話し方をするけれど、相手に堅苦しさを感じさせないのは人柄があってこそだと思うし……。


「そうでしょうね、あんな人がその辺にゴロゴロいたら迷惑だわ」

「千夏ちゃんこわーい」

 彼女たちの言いたいことがわからないでもない。でも、私は本当に何とも思っていない。

 冗談で結婚をぶら下げて、相手の反応をうかがうような男は好きになれないのだ。



「とにかく、私は社長に興味の欠片もありません!」

 きっぱりと言い切った私の視界3メートル前方に、社長の姿を見つけて小さくなる。


 絶対に聞こえていたはずなのに、いつだって彼はポーカーフェイスだ。

 気に食わないほど、完璧な。


< 7 / 251 >

この作品をシェア

pagetop