溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~



 翌日、社内はちょっとしたブームが起きていた。

 初めて桃園社長に会った社員が、彼を高評価しているのだ。大半が女性なのは言うまでもないけれど。



「千夏ってさ、うちの社長に興味ないってことは、意外と桃園社長みたいな“大人ワイルド系”が好きだったりするの?」

「だから、私は仕事をしているだけで」

 昨日、彼と2人で取材を抜け出したところを見ていた幾人かが、そんな噂を立てたらしい。



「本当に、葛城社長も桃園社長も尊敬はしても特別な感情を抱いたことはないの。ごめんね、打合せに行くから」


 資料とノートPCを持って、離席する。
 通りすがる社員の視線が、昨日までと違う視線を向けてきているのを感じつつ、社長室を訪れた。




「来月の取材分について、お時間よろしいでしょうか」

「もちろんです」

 こんなに毎月取材を受けている企業や社長は珍しいだろう。
 それだけ広告費に資金を投じていることもあるけれど、実際に売上げや株価に効果が見込めるのだから、決して無駄ではない。


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