溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「間違ってもコンビニのパンが入った袋を片手に、会社の前で気軽に指輪は渡さないですし」
「社長、コンビニ帰りだったんですか?」
「そうですよ。それに、写っている社員が私の特別な人だとしたら、そういう表情を世間に知られたくないですね」
カメラ目線で社長が微笑みを見せたところでCMに切り替わり、乃利子がタブレットの電源を落とした。
「社長、完全に今回の記事を逆手にとって、また好感度上げたんじゃない?」
「作戦勝ちだね」
「千夏も助けてもらえたし、これで心置きなく桃園社長の嫁になれるわけだ」
同期3人の一件落着ムードに便乗して、ホッと胸を撫で下ろした表情くらいはする。
だけど、最後のひと言がどうにも引っかかる。
そういう表情を世間に知られたくないなんて、社長らしくない気がした。
大切な瞬間の、愛する人の表情は他の誰にも見せたくないと思うような人なんだと、初めて知ったのだ。