溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「今日、何時でも構いませんので少しだけお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「何かお忘れでしたか?お急ぎでなければ、こちらからお送りします」
横野さんが何か忘れたのであれば、取り急ぎ梱包して送ればいい。
取材内容に漏れがあったのなら、代行して社長にインタビューして、原稿を送れば済むかもしれない。
「いやいや、そうじゃないんです。謝罪に伺いたいんです」
約束した17時。1月の夕方は夜と差がなくて、まだこんな時間だったのかと思わせられる。
アポイントを入れておいたから、桃園さんはすんなり受付から広報部が入っている階へやってきた。
「お忙しいところすみません」
「ご足労いただいてしまい、申し訳ありません。広報の白埜と申します」
「フラッグ出版の桃園です。いつも大変お世話になりありがとうございます。葛城社長を掲載させていただくと、部数が伸びるんですよ」
「そうなんですか。葛城が聞いたら喜びます」
どうぞ、と促して各々着席して、ようやく同じくらいの目線になった。