呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。

気付けば時刻は21時を過ぎていて、居ないとは分かっていてもコーヒーショップを軽くガラス越しに覗いてしまう。
軽く習慣になりつつもお店に入ることはまだ出来ない。
でもさ、居たらどうすんだよって話よね。

姿だけでも見たい。
だなんて、そんな少女漫画みたいな事この歳でするなんてびっくりだ。


結局姿を見かけることも、お店に入ることも出来ないまま電車に揺られて自宅アパートのある駅まで帰ってきた。

このまま帰りたいけど、冷蔵庫何も無かったんだよね。
パンもないし、コンビニ寄らなきゃ。
帰り道とはいえコンビニすら寄りたくないほど疲れていた。

仕方ない。
寄るか。

おにぎり1つに明日の朝用にもパン。
後は…と自分が何を食べたいのかさえ分からない。それでも今この前のように倒れたりする暇はないから何かは摂取しなくては。

お総菜コーナーの前にあるおでんに気付きふらふらと覗き込んでしまった。

あっ、大根食べたい。
でもなー。
大根、1本100円でスーパーで売っているのを知ってると、この一切れ100円はとても高く感じてしまう。
うーん。


「━━━━━さん?━━たむらさん?……三田村さん?」

「えっ!?は?は、はい!」

おでんの事を考えすぎていたのか、名前を呼ばれていることに全く気付かなかった。
慌てて声をした方に顔を向けると、
会いたくて、でも会いたくなくて、
初めてあの小さなコーヒーショップから出たところで見る桜木さんがそこに居た。
< 16 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop