王子、月が綺麗ですね
王子は昨晩、地図を広げ朱雀の社の周辺を調べておられた。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花と言うからな」

紅蓮殿が高らかに笑った。

「もし、怨嗟だったとして朱雀に何かあれば他の社もただ事ではあるまい」

「お……葵くん!?」

王子はゾッとするほど凍りついた冷たい目をして呟いた。

「葵、あんたの冗談は笑えないよ」

瑞樹さまが王子に、余計な事を言わないようにと言いたげに舌打ちをされた。

「まあ、王宮のあの光の柱と言い、龍の光と言い、尋常ではないことくらいわかるさ。何しろ、龍神の加護を受けた女王陛下だからね。その当の龍神が」

「其方、何を探ろうとしておる?」

王子がスッと片手を伸ばし、紅蓮殿に背負われたまま、男性の額辺りで五芒星の印をゆっくりと結んだ。
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