王子、月が綺麗ですね
廊下では凛音と叔母上の声がしている。

「女王陛下、王陛下もご心配されておりまする」

俺は首から下げた勾玉を掌でキュッと握りしめた。

「朔が明けるまで大人しくしておればよいのであろう」

俺がハーン殿に観念した口ぶりで言うと、ハーン殿は「解っておられるならば、そのように」と俺を睨みつけた。

「其方は脅しておるのか?」

「別に脅してなどおりませぬ。あるがままを」

「もう良い。其方の話は気が滅入るばかりだ」

「とりあえず、痛み止めを処方いたしまする。毎食後にお飲みくだされ。よろしいですかな、くれぐれも陰陽術は……」

「口説い」

「口説いほどに申し上げねば、聞き入れられぬでしょう?」

「確かに。見透かされておりますよ」

紅蓮殿がニヤついた顔で見つめ、祥は腹を抱えて笑いを堪えていた。

反論したいところだが、此処は黙って認めるしかないと観念した。
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