本当の君を好きになる


***


ガラララ──。



いつものように、教室の扉を開けて中に入る。

先に来ている生徒は、友達と話をしたり、宿題をしたりと様々だ。


自分の席に座ろうとしたその時、私は一瞬固まる。




「……お、おはよう。桐谷くん。」




いつもなら私が席に座って彼の事を迎える筈なのに……。

今日は、早かったんだなー……。


読書をしていた彼は、私の声にすっと顔を上げる。




「あ、おはよう。井上さん。」




そして、いつもの優しい笑顔で微笑む。

私は、荷物を用意しながら緊張をほぐすためにも、自分から彼に話しかける。


「今日は早いんだね。びっくりしちゃった。」


「うん。井上さんと話がしたかったからね。」




「……え?」




思わず、出しかけた教科書をそのままに、桐谷くんの方を見た。

彼は変わらず笑みを浮かべている。





「……でも、俺が話を聞く必要も無さそうだね。何か、スッキリしたっていう顔してるもん。」



「……桐谷くん。」



「やっぱり瀬戸さんはすごいね。」



「……うん。本当にすごい。尊敬するよ。」



「まあ、これで俺もひと安心だよ!」




桐谷くんは、うーんと伸びをすると再び本に手を伸ばす。





「──桐谷くん。」





「ん?」




「私、話があるの。」




< 245 / 308 >

この作品をシェア

pagetop