今夜、きみを迎えに行く。




「アオイ、一週間、お疲れ様」



カウンター席で振り返った、シュウが言った。



わたしはこくりと頷く。トミーさんがカウンターの向こう側から出てきて側に来た。そして、わたしに小さな声で耳打ちをする。



「ちょっとだけ、出掛けて来る。すぐに戻るよ」



「え。あ、はい」



答えたわたしにトミーさんは、悪戯っぽくウインクをしてみせる。

これは、つまり、わざとわたしとシュウを二人にしてくれるってことなのか。



「葵、お客様にミルクココアを」



「あ、はい!」



トミーさんは、小さく手を振って店を出ていく。

わたしはセーラー服のまま、とりあえずエプロンだけをして、いつものココアの準備をする。それに、昨日焼いてきたパウンドケーキ。


牛乳を小鍋であたためて、パウンドケーキを白いお皿に盛り付ける。トミーさんの真似をして、ミントの葉っぱと生クリームを隣に添える。

ココアパウダーを少しずつ練って、チョコレート状になったら残りの牛乳を注ぐ。


シュウへの感謝の気持ちを込めて、丁寧に。


シュウはそれを、黙ってにこにこと笑いながら見ている。






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