今夜、きみを迎えに行く。
「えっと…、どうぞ」
おそるおそる、シュウの目の前にパウンドケーキのお皿を置いた。生クリームでごまかそうとしたけれど、やっぱりちょっと、歪なかたち。それと一緒に、暖かいココア。これは、わたしのぶんと合わせて2つ。
「美味しそうだ。いただきます」
「初めて作ったから…その、見た目はあんまりだけど…」
苦し紛れに言い訳をする。胸をどきどきさせながら、シュウがパウンドケーキを口に運ぶ様子を観察した。
「…うん、美味しい。すごく美味しい」
「本当?」
「本当だよ。すごく美味しい。ココアとも、よく合う」
「…よかったぁ…」
シュウの顔は、嘘をついているわけではなさそうだ。わたしはほっとして、胸を撫で下ろす。
「ところで、今日で一週間だけど」とシュウが言った。わたしは思わずぴんと背筋を伸ばす。
「課題のレポート提出日だ。口頭でいいって言ったよね。一週間、やってみてどうだった?」
シュウはほんものの先生みたいな顔つきになる。
わたしのことを、しっかり見詰めて、優しくわたしの言葉を待っている。
わたしは心を落ち着かせるために、ココアをひとくちだけ飲んだ。甘くて暖かい。お腹にゆっくり落ちていく。
わたしは改めて、この一週間のことを思い出した。