今夜、きみを迎えに行く。
豊かな自然に囲まれて伸び伸びと育ったはずのこの身体も、運動神経は決して良いとはいえないし、たくさんの早期教育を受けたはずの脳みそも、それらをまったく生かしきれていない。
近所で評判になるほどの、都会的な雰囲気を持った美人の母と、身長が高くスマートな父との間の子であるにも関わらず、超標準的な容姿で産まれてきてしまったわたしは、産声をあげた瞬間にもうすでに、親不孝な娘だったのかもしれない。
おまけにわたしの両親は、わたしが産まれる直前まで、産まれて来る子どもは男の子だと思っていたらしい。
葵というわたしの名前は、その子の為に考えられたものだ。
容姿端麗で運動神経抜群の超秀才の男の子、になるはずだったわたしは、何の取り柄もないまま、ただの平凡な十七歳の女の子になってしまった。