今夜、きみを迎えに行く。
祖父が亡くなったのはわたしが高校に入学する少し前。
それまで、わたしは自分の家族が大好きだった。
世話焼きでお喋りで料理上手なおばあちゃん、無口だけれど一家をまとめる存在感のあるおじいちゃん、優しくて美人な自慢の母、同じくスマートで格好良い自慢の父。
何の取り柄もないわたしにも、祖父をはじめとする家族は皆とても優しくあたたかく接してくれていたように思う。
祖父が体調を崩してからも、世話焼きで元気な祖母がすべての介護をひとりでこなし、今までと変わらず家のことやご近所とのお付き合い、その他の家事をほとんどひとりでやってくれていた。
そのおかげで、母も父も毎日、仕事に行くことが出来たし、わたしのお弁当はキャリアウーマンの母に代わってほとんど、祖母が作ってくれていた。
そんな元気な祖母が、祖父が亡くなった日を境に、すべての気力をなくしたように、部屋に引きこもるようになった。
祖父の仏壇と向き合って、ひとりでぼーっと過ごしていることが増え、それが一日中になり、料理も、掃除も、お喋りもしなくなった祖母は、ついにまともに歩くことも出来なくなった。
たまに話すことといえば、祖父が生きていた頃の話。
記憶力も衰えていき、最近では昨日のことさえ覚えていられないどころか、今朝の食事を食べたかどうかも解らなくなってしまった。
母は泣く泣く仕事を辞め、祖母の世話に一日を費やしている。