今夜、きみを迎えに行く。
母親は祖母のベッドを起こして、枕元の小さなテーブルに食事を置いた。
祖母は食欲がないのか食事には手を付けようとしない。
「おばあちゃん、食べないの」
わたしがたずねても、祖母は窓の外を眺めているだけで返事はない。
「後でもう一度来て、それでも食べてなかったらわたしが口に運ぶから、大丈夫よ。葵も晩ごはんにしなさい」
母親はいった。最近、祖母の食欲はどんどん落ちている。無気力で、少しずつ痩せてしまう祖母をみるのはやっぱり辛い。
「おばあちゃん、昔はあんなによく食べたのに」
ふっくらとしていた昔の祖母を思い出してわたしが言うと、母親も「そうね」と言って悲しそうな顔をした。
「おばあちゃんね、もう、お父さんのことも誰だか解らなくなっちゃったのよ。お父さん、やっぱりそれが相当ショックだったみたいでね」
母親が言った。わたしや母親だけでなく、実の息子である父親のことも解らなくなっていたなんて。
「お父さんね、毎晩、おばあちゃんに泣きながら話し掛けてるのよ。母さんなんで俺のことわかんないんだって」