今夜、きみを迎えに行く。
「…お父さんが?」
「ええ、そうよ。お父さん、普段はあんなだけど、おばあちゃんのことすごく大切に思ってるからね。お母さんが嫉妬しちゃうくらい」
母親は、祖母を眺めながらそう言って笑う。
祖母がまた、ほんの少しだけ微笑んだような気がする。
「知らなかった…、わたし、お父さんはおばあちゃんに対して冷たいって思ってた」
「おばあちゃんを施設に入れるなんて、お父さんも本気で思ってなんかいないわよ。それがわかってるから、お母さんもつい、売り言葉に買い言葉でかっとなっちゃうんだけどね。お母さんの悪い癖」
「…お母さん…」
「葵にも、そういうところ、あるでしょ?お母さん、反省してるのよ。お母さんの悪いところが、葵にも移っちゃったのかなってね」
母親は、そう言って舌をペロッと出して見せた。
かっとなって、思ってもないことをつい口にしてしまう悪い癖。
茜にあんなふうに言ってしまったことを思い出し、反省する。
毎晩、祖母に話し掛けては泣いている父親の姿を想像すると、いつもは強い口調で怒ってばかりいる父親も、祖母にとってはやっぱりひとりの子どもなのかもしれない、と思った。
「こんな話したこと、お父さんには内緒よ」
母親は、いたずらっ子みたいな顔をして、わたしに言った。わたしはうんと頷いた。
父親が、お風呂に入っている音が聞こえる。わたしがピカピカに磨いたお風呂。