今夜、きみを迎えに行く。
おばあちゃんの細い手を握ってみる。
血管が浮き出た、シミだらけの冷たい手だけれど、皮膚には固さもある強い掌。おばあちゃんが昔、よく言っていた。働き者かどうかは手を握ればわかるって。
「葵、庭の掃除をしてたでしょう」
母親がいった。わたしはうんと頷く。
「おばあちゃん、それで嬉しくなっちゃったのかもね。だからきっと、花壇になにか植えようとしたのね」
母親は祖母の顔を見詰めて微笑んでいる。
いつも若々しくて綺麗だった自慢の母親は、いつのまにか普通の痩せたおばさんになっている。
だけど、それはどこか祖母に似ている気がした。
「葵はお父さんが来たら、一緒に帰りなさいね」
「なんで?わたしもここにいる」
「おばあちゃんは、葵がちゃんと寝て、明日もちゃんと学校へ行くほうが喜ぶわ。おばあちゃんが話せたら、きっと帰ってはやく寝なさいって言うわよ」
昔、おばあちゃんによく言われた。はやく寝なさい。明日も学校でしょって。母親がそう言って笑ったので、わたしはうんと頷いた。