純愛
初恋
入学式。
 
まだ、少し肌寒い風が、私の髪をなびかせていた。だぼっとした着慣れない制服を着て、鼻を赤らめながら、母と、入学式会場(中学校)へ向かった。
小学生の時にいじめられていた私にとって、入学式は、いじめから脱出する事が出来る為の最初の手段であった。
 「もう、誰にもからかわれたくない。だから、中学生になったら、変わってやる。」
 自分にそう言い聞かせて、軋むパイプ椅子に腰掛けた。隣の子も、またその隣の子も、皆、氷のように固まっている。緊張しているのだろうか、、、。私はそこまで緊張していなかった。自分でも不思議に思った。
 上級生に誘導されながら、吹奏楽部の綺麗な音色に合わせて、退場する。体育館を出た瞬間、あっ、中学生になったんだな、と、実感した。
 この沼東田中学校は、規模が大きいらしく、校舎がもの凄く大きい。正門から校舎を見ると、思わず口が開いてしまうほどだ。なので、部屋が多い。移動教室なんかは、手こずりそうだ。
 自分のクラスに戻り、自分の席を確認し、一番寒い廊下側の席だと分かると、少しガックリしながら、自分の席に座った。皆、同じ小学校だった子と、仲良く話している。
 数分後、廊下からハイヒールの音が近ずいてきた。クラスメイトは直ちに話を止め、自分の席で、待ち構えた。
 見た目とは想像出来ない、落ち着いた声だった。
 「102の皆さん、初めまして!私はこのクラスの担任になりました、笹塚 理恵子と言います。よろしくお願いします。」
 笹塚先生は私達に一礼をして、ほのかに笑を零した。それに対して、男子達がザワッと顔を赤らめる。
 しかし、その中で、1人だけ笹塚先生に反応しない男子生徒がいた。鼻が高く、色白だし、キレイな顔立ちをしていて、肘を付いて、どこか遠くを見るような目で、運動場を眺めている。そういう男子もいるんだなぁ、、、と思っていたら、いつの間にか、一時間目の学活が終わっていた。
休み時間。友達付き合いが苦手な私は、1人で本をひたすら読んでいた。話のクライマックスに入りかけた時、本に影がかかった。私が前を見るより先に、それは話しかけてきた。
「その本、面白そうだな。」
「、、、あっ、えっと、、、。」
私は相手から話しかけられたことがなかったので、変な返事になってしまった。恥ずかしい、、、。
「あー、いきなり話しかけて悪かった。俺の名前は康登(ヤスト)、川崎康登だ。よろしく。」
康登という人物は、特にこれといって背丈はないが、モテそうな顔立ちだ。大人っぽさが滲み出ているような気がする。
私は、差出
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