完璧な彼は、溺愛ダーリン
そっと彼の両腕が私の背中に回った。顔を肩に埋められ、ぼそりと彼が呟く。
「大好きだよ、君の事。
……このまま、連れ帰りたいぐらいに」
もう、ダメだ。
限界だ。
ダメだって何度も何度も、抑えつけていたのに。
私が今こんなに苦しいのは、認めちゃダメだって思っているからだ。
「……離して、ください」
弱弱しくも、まだそんな事を言う私。
悪あがきも甚だしい。
本当に嫌なら突き飛ばすでもなんでもすればいい。
人通りが少ないとはいえ周りに人もいるんだ。叫んだらきっと逃げられる。
でも、行動に移せない。
だって、私嫌じゃないんだ。
抱き締められて、好きだって言われて、嫌じゃない。
葛木さんみたいな人を好きになるだなんて、現実的じゃない。
見た目だけじゃなくて、中身までも素敵な人。
彼にその気がなくたって、女の人が放っておかない。
私はジムで会う彼しか知らない。
会社でだってきっと人気の筈だ。
そんな人を好きになるなんて、考えられない。