完璧な彼は、溺愛ダーリン
もしそうなら、絶対に映画なんて行けない。
そんなの行けるわけない。
栞は少し口を閉じて、視線を伏せる。
それからくっと顔を上げると、しっかりと頷いた。
「うん。好き」
「そっか」
「最初はミーハーだったよ?でもさ、本当に優しいじゃん。彼。
だからどんどん好きになっちゃったよね」
「あの見た目で凄く優しいもんね」
「そうなの。それがしんどい」
「うん」
いつもは明るいその笑顔に落ちた陰。
連絡先を知っているわけじゃない。
会えるのはここでだけ。
それも、たった少しの時間。
なのに、好きになっちゃったんだ。栞は。
「栞、頑張ってね。応援する」
私はドキッとした気持ちとか、全てに蓋をした。
栞がこれだけ本気なのだから。
……私は好きにならない。
映画のチケットは家に帰って破り捨てよう。
土曜日。
――――私は彼の元へは行かない。