完璧な彼は、溺愛ダーリン
都心にあるオフィス街が近くにあるジムだから、お客さんは専らサラリーマンやOL。
昼間はセレブ主婦の溜まり場。
芸能人だって訪れるこの場所。
だからといって、憧れられるような職場ではない。
インストラクターとかだったら、お客さんと話す機会も多いだろうし、もしかしたら恋愛のチャンスもあったかもしれない。
頻繁に訪れるお客さんの顔を覚えたりはするけどさ。
そこから恋に発展させる方法を私は知らない。
それでも別に良かった。
毎日楽しかったし。
お客さんが来なくて暇が出来たら掃除したり、新規会員勧誘のチラシを印刷したり。
今日は今度会員に郵送する為のチラシを折っている。
有名なダンス講師を呼んで教室を一時間開くお知らせや、マッサージやフットケアなどの値引きのお知らせだったり。
私より先にここでバイトしている栞と一緒に折っていた。
私がチラシを折って、栞が封筒に入れて行く。
暇つぶしにはちょうどいい。
「あ、来た。スパダリ」
栞がチラシを封筒に入れる手を止めてぼそっと呟いた。
私は倣う様にその声が差す方に視線を向ける。
スパダリ。それはスーパーダーリンの略。
名前の通り、高身長でイケメン。そして、爽やかで勤め先は大手企業。
IT関係で有名らしい。私はよく知らないのだけれど。
身に着けている小物、カバンなどもブランドモノだったりして、ここではそう呼ばれている。