完璧な彼は、溺愛ダーリン
「……でも、その」
ゆっくりと私は重い口を開く。
ハッキリ言わないといけない。
私は葛木さんを好きになるわけにいかない。
彼は栞の好きな人。
栞を裏切りたくない。
「待った」
顔の前に葛木さんの手の平。眉を下げ、葛木さんは私の言葉を止めるとぽつりと呟くように言った。
「ちゃんと、俺を知ってから振って欲しい」
「……葛木さん」
「俺の事、ちゃんと知ってそれでも付き合えないって思ったなら、諦め……るかもしれない」
なんとも歯切れの悪い、ハッキリとしない言い方。
「わからないかも。それでも好きだろうから簡単に諦められないと思う」
「……」
片手で頭を抱えながら、考え込む葛木さん。
「だからさ、三石さんも俺の事避けたりしないで貰えると、嬉しいというか。
無視されても諦めるつもりないけど、それでもやっぱ無視は凹むから」
「……はい」
「よかった。家はどっち方面?俺と一緒に帰るのが嫌ならタクシー捕まえるよ」
「いえ、一人で帰れます」
「ダメです。もう薄暗いし。俺に無理矢理送られたいならそれでもいいけど」
「最寄り駅に自転車停めているんで、本当に大丈夫ですよ」
「そっか。なら、最寄りの駅まで送ってもいい?」
「……わかりました」