強引部長の独占ジェラシー
「良かった。俺、純夏ちゃん狙ってるからさ」
決めた顔でこっちをみながら言うあまりにも軽々しい言葉に、私はそれをまるで他人事のように聞いていた。
「はいはい、そうなのね」
もう、こういうところを直せば周りに何か言われることもないのに……。
やがてオフィスに着くと、河原くんは上司に呼ばれてそそくさとその場を去って行った。
やっと解放されてはぁ、と深いため息をついていると、後ろから声をかけられる。
「おはよう」
「あっ、おはようございます」
鈴村さんだ。
背筋をぴんっと伸ばしながら堂々と歩いている姿は相変わらず息を飲むくらい美しい。
「昨日、どうだった?」
「本当にいい経験をさせて頂きました」
私の言葉に鈴村さんは懐かしいなぁ、とつぶやいた。
「私たちの仕事って、依頼されたことをやり遂げて出すだけだから、なかなか外との繋がりが感じられないじゃない?ああいう体験ってすごくやる気に繋がるわよね」
「はい、本当にいつも教えて下さってありがとうございました」
昨日のことを思い出せば、自然と返事に力が入った。それを見た鈴村さんはにこっと笑うと、私の背中をばしっと叩く。
「よし、今日も頑張ろう」
外見からは想像出来ない男勝りな性格。そういうのが周りの社員を惹きつける。