守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「……」

「……」


隣同士、席に座って黙ったまま前を見る。
大きなスクリーンには公開予定の映画の予告が流れていた。

まだ始まる前だからか、中には誰もいなかった。
明るいままの場内。

でも私たちの間に会話はなかった。

それはさっきの事を思い出してのことだろう。

恥ずかしくて、恥ずかしくて山瀨さんの顔がまともに見えないんだ。


「……ミサキさん」


予告の音しか流れていなかった空間に、山瀨さんの声が落とされた。
小さな声だったのに響いて聞こえたのは気のせいだろうか……。


「……はい」


前を向いたまま返事をする。
それが精一杯だった。
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