守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「……すみません……格好悪いところをお見せしてしまって……」


映画館を出た頃には山瀨さんの瞳に涙はなかった。
でも、赤く染まったそれが名残を表している。


「いえ、可愛かったですよ」


本音だったが冗談っぽく言えば山瀨さんは小さく唸っていた。
それがまた可愛らしいのだが、あえて言わずにいれば彼はふて腐れた様に唇を尖らせた。


「可愛いって言われても嬉しくないです」


プイッと、効果音がつきそうなくらいに山瀨さんは私から顔を逸らす。
でも照れていることが分かるから悲しい気持ちにはならないんだ。


「私は好きですよ」

「……えっ……」

「山瀨さんの純粋で可愛いところ」


視線が再び向けられたと思ったら一気にその顔は赤く染まっていく。
何事かと思ったが、自分の言葉を思い出して思わずフリーズしかけた。


「……」

「……」


沈黙だけが辺りを包み込むけど、すぐにそれは掻き消されていく。
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