守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「迷うことは無いだろう?」

「え……」

「お前の心はもう決まってるはずだ」


大将はそう言うと包丁を置いてカウンターから出てくる。
そして私の横に立つと屈むように顔を覗き込んでくる。


「たいしょ……」

「過去は所詮過去だ。どんなに好きだった男でも時間が経てば変わることだってある。
勿論、変わらないこともある。でも大切なのはお前が未来を一緒に歩いて行きたいって思う奴を見つけることだ」

「未来を……一緒に……」

「ああ。この先、お前が守って欲しい人、守りたい人。
一緒に笑って泣いて……一生ソイツの隣にいたいって思うのは誰だ?」

「……」

「考えなくても……もう分かってるんだろう?」


全てを見透かしたように笑う大将に諦めたように笑みをこぼす。
ずっと、本当は分かっていた。

大切な人が、一緒にいたい人が誰か。なんて。
でも認めるのが怖かった。

想いを伝えて、その人と結ばれたとしても……。
また同じように駄目になるかもしれない。

そう思うと前に進めなくて……。
勝手にブレーキを掛けていたんだ。
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