守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「……何でもお見通しなんですね」

「まあな、ガキの頃から知ってるんだ、当たり前だろう」

「ガキって……高校生からじゃないですか」

「あ? ガキだったろ? たかが失恋で死にそうな顔しやがって」


大将は昔を思い出したのか大袈裟に肩を上げていた。

確かに今思い出せば……。
かなり恥ずかしい。


「あの時は……どうかしてたんです」


賭の罰ゲームの事が分かってから途方に暮れていた私は、何処に行っていいか分からずに彷徨い歩いていた。
そのせいで迷子になった所を大将に保護されたんだ。

見ず知らずの私に巻き寿司を作ってくれた上に話まで聞いてくれた。

そんな大将の優しさに、お寿司と向き合う真剣な眼差しに憧れてここで働きたいって思うようになった。


「まあ、あれが会ったから俺たちは出逢ったんだ。そんなに悪いことでも無いかもな」

「……それを言われたら何も言えないじゃないですか……」


ガハハ、と笑うと大将はふと視線を宙に彷徨わせた。
何処か一点を見つているけれど、そこには何も無い。
不思議に思っていればタメ息交じりな声が聞こえてきた。
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