鏡の先の銀河鉄道
 鏡の先には、逆さまの世界がある。
 それは、僕が勝手に思い込んでいるだけのこと。それでも、僕の目の前に存在しているこの鏡は、僕のマネをしながら僕とは逆の動きをする。
 科学的にもちゃんとした理論があったりする。でも、僕は僕のマネをするこの鏡が少し怖い。同じようで何かが違う鏡。本当は、ほんの少し遅れて反応しているかもしれない。僕ではない、鏡の中の僕は逆さまな動きをする。
 
 鏡の先には、逆さまの世界がある。
 
 逆さまの世界は、僕にはただ怖い世界。どんな世界があって、どんな風に逆さまなのか。僕は何も知らない。それでも、この先に世界があるのならば・・・それは、恐怖しかない世界。
 
 クローゼットに備えつけてある鏡に手を伸ばす。
 少しひんやりとした冷たさが指先から伝わってくる。怖い・・・それと同じぐらいに、懐かしいと思う。毎日見ているものだからなのかもしれない。怖いけれど、嫌いじゃない。
 「陣ー、早くしなさいー!遅刻するでしょ!!」
 怒鳴り声に似た母親の声が、いつものように下から聞こえる。
 鏡に伸ばしていた手をゆっくりと外し、ベットの上置きっ放しになっていたジャケットと鞄を持ち、怒鳴っている母親の元へと向かう。
 「いってくー。」
 少しダル感じの声で、台所にいる母親に声をかける。家を出る瞬間、母親の『いってらっしゃい』という声が聞こえたのを確認してから家の扉を閉めた。

 いつもと変わらない、いつもと同じ日常。
 
 それは、つまらないもの。
 
 いつもと同じように、家を出て学校へと向かう。
 「じーん、おはよー!」
 「おぅ。」
 決まって聞こえてくる、友達の声に軽い挨拶で返事をする。
 「なぁ、今日って英語だろ~マジ楽しみなんだけど!!」
 「はぁ?英語なんてダリぃだけじゃん。」
 「いや、今日の英語は別だって・・・外人だぜ!!外人のセンコー来るんだぜ!!!あの胸は、やべぇって~Eカップはあるな!!!」
 「朝から、何言ってんだよ。」
 バカバカしい会話は、右から入って左に抜けていく。それでも、その会話が毎日あり。日常になる。つまらなくはない、楽しいもの。それでも、ふと素に戻るとむなしくなることもある。何に対してなのか自分でもわかってない。
 

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