鏡の先の銀河鉄道
 深く暗い威圧感を持った、ジョバンニの声が響いた。
 
 「君は、カムパネルラだ。」
 
 暗示のように、響くその声は俺の身体を縛って行く。静かに、そしてゆっくりと、身体が金縛りにあっていく。
 
 
 それでいい。
 
 
 俺は、カムパネルラだ。
 
 
 安心したかった。呼ばれる名があるのなら、その存在にすがることで自分が保てると思った。そうしないと、俺が消えてしまいそうだから。
 「ああ・・・俺は、カムパネルラだ。」
 
 俺は、自分の感情を制御するためにゆっくりと深く深呼吸をした。
 俺の落ち着くのを確認したからなのか、シリウスは俺の横に座った。
 「ごめん、驚かせた。」
 「いいよ、落ち着いたみたいで良かった。」
 最初から変わることのない、笑顔でシリウスは答えた。
 「シリウスは、どこに行くの?」
 ジョバンニの問いかけにあわせて、シリウスの顔を見た。
 「僕は、しし座に向かっているだ。」
 「しし座?」
 銀河を走るこの鉄道の駅が、星座なのは当たり前なのかもしれない。それでも、そのしし座という駅に何があるのか知りたかった。
 「しし座に何をしにいく?」
 ジョバンニは、俺の代わりに俺の思っている質問をしてくれていた。
 「今年は、流星際だからね。」
 
 流星際?
 
 「そうか、もぅ流星際なんだね。」
 俺だけを取り残して、二人は会話を続けていた。自分だけ知らない話をされているのが、少し寂しかった。
 「ジョバンニ、流星際って何?」
 「あれカムパネル、知らないの?君だって楽しみにしてたじゃないか。」
 「俺が?」
 「そうだよ、しし座から流れる流星を早く見たいって!」
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