鏡の先の銀河鉄道
 今の言葉から、ジョバンニは俺のことを知っている。俺は、この世界の事も『カムパネルラ』という人物の事も何も知らないのに。俺の知らない俺を知っている人物が存在している。
 「変・・・。」
 「だって、切付持っているのにないって言ったり。僕の事、誰だって言ったりさ。なにより、僕なんかよりずっとずっと大好きだった銀河鉄道のこと知らないふりして・・・本当にどうしたの?」
 俺は、この銀河鉄道を知らない。俺の記憶の中には、この世界もこの鉄道も存在なんかしてない。その鉄道を好きな訳がない。
 「俺は、君とこの銀河鉄道に乗ったことがあるのか?」
 俺の中にある疑問が、素直に口をついて出た。
 そんな俺の言葉に、ジョバンニは驚いた表情を見せた。そしてすぐその後、笑い出した。俺には、なぜ彼がそんなに笑っているのかわからなかった。
 「カムパネルラ、冗談はやめてくれ!」
 「冗談じゃない!!俺は、本気で聞いているだ!!!」
 ジョバンニは、俺の言葉に何かを考えている素振りを見せた。俺の中にある不安や、疑問なんて分からないくせに。
 「俺は、カムパネルラなんて奴じゃない!俺は、平塚 陣だ!」
 叫ぶことで、自分という人間を誇示したかった。
 それでも、ジョバンニは怒鳴られたことを怒ることなく・・・優しく微笑んでいた。俺は、その笑顔が恐かった。
 「君は・・・間違えなく、カムパネルラだ。」
 「違う、違う、俺は・・・。」
 受け入れる・・・そうしないと、俺はこの世界で生きられないのも分かってる。それでも、認めたくないのも本当だ・・・。
 「君は、カムパネルラだ!!」
 威圧的な、強い口調で彼は言い放った。
 「だって、君はこの銀河鉄道に乗るために名前を捨てたじゃないか。だから、君はもうカムパネルラだ。」
 彼の言葉に、言い返せない自分がいた。身分証を切られただけで、俺がカムパネルラになる訳がないのも分かってる。それなのに、喉の奥に言葉が詰まって出てこない。

 そして、僕たちの間に沈黙が流れる。
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