鏡の先の銀河鉄道
 銀河鉄道は、僕たちの沈黙なんておかまいなしで夜空を走り続けけていた。
 レールもなく、夜空を静かに走る銀河鉄道。何故か驚くこともなく、それを見ていられた。幾億の星が輝く中を走る鉄道は、とても不思議な風景なのに。本当は、知っているのかもしれない。

 そう思えば、楽だ。
 
 夜空を見ながら、俺はジョバンニに何も言えなかった・・・ジョバンニも俺に何も言ってこなかった。何故か、そんなジョバンニに違和感を感じていた。そして、彼への違和感が、言葉を喉の奥へと押し込んでいく。
 
 沈黙は、俺の中の何かを壊していく。
 
 窓から見える景色は美しい。
 星だけが輝き、何もかもが純粋に見える。そして、美しさのなかに恐怖が存在していた。終わりのない闇、先が見えない闇は、全てを飲み込んでしまいそうだった。俺も、この中に飲み込まれてしまうのかもしれない。

 「どこに行くんだ、俺は・・・。」
 
 やっと、口をついて出た言葉がそれだった。
 「カムパネルラは、どこに行きたいの?」
 『どこ?』
 俺には、わからない。この銀河鉄道がどこに止まるのかも。どこに向かっているのかも。俺が、聞きたいぐらいだ。
 「ジョバンニは、どこに行くんだ。」
 「僕は、君が行きたいならどこでもついて行くよ。」
 彼の言葉にどれほどの本心があるのか分からない。『ついていく』その言葉を信じることが出来ない。
 「俺は、どこに行っていいのかわからないから。」
 「君には、あるはずだよ行きたい場所が・・・。」
 ジッと見つめられた眼は、冷たく静かな感じだった。
 行きたい場所。どこに・・・俺は、何がしたい。俺の言葉を待っているように、彼は何も言わずに俺のことを見ている。
 「十字架・・・。」
 どうして、そんな単語を口にしたのかわからない。
 「サザンクロス。君は、そこにいきたいんだね。」
 
< 8 / 24 >

この作品をシェア

pagetop