俺様社長の溺愛宣言
…時間も時間だ。

ドアを叩くことなど出来ない。まして、満里奈の体調が思わしくないので、事をあらげたくない。

とりあえず、満里奈の居場所はわかったから。

携帯番号も知ることが出来た。

今しばらくは、満里奈を静かに寝かせてやりたい。

俺は踵を返し、車に戻ると、自宅へと帰った。

…次の日、仕事に向かった俺は、昼まではなにも考えず、仕事に没頭した。

正午。

仕事に一段落ついた俺は、携帯を取り出すと、満里奈の携帯を鳴らした。

『…もしもし?』
「…」

…久しぶりに聞く満里奈の声に、胸が一杯になり、言葉につまる。

『…誰ですか?』

満里奈の携帯は代わっているので、俺の番号は登録されていないようだ。

「…御崎零士と言えば、わかるか?」
『…』

今度は、満里奈が黙りこんでしまった。

「…満里奈、日本に帰ってきてるんだな…仕事も、復帰したんだろ?…体調は良くなったのか?」

…グズっと、鼻をすする音が受話器ごしに聞こえてきた。

「…満里奈?」
『…零士、さん』

涙声で、俺の名を呼ぶ満里奈に、更に胸が一杯になったが、俺は冷静に、優しい声色で、満里奈に問いかける。

「…満里奈、お前に会いたい」
『…私も…会いたい、です。…遠くから見る後ろ姿じゃなくて、その顔を』

…会社で、満里奈は、俺の後ろ姿は見たのか?

「…今日も仕事休んでるのか?」
『…はい』

「…わかった、今から行く」
『御崎社長?』

俺は、携帯を切ると、社長室を飛び出した。

「…社長、何処へ?!」
「…直ぐ戻る」

ただ一言、中島にそう告げて。
< 104 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop