俺様社長の溺愛宣言
10.俺様社長の薬指
…薬の臭い。…心電図の機械音。…誰かの喋り声。

「…小林先生、満里奈の容態は?」

…これは、零士の声だ。

「…突然たくさん走って、心臓がビックリしたんでしょうね。検査結果も悪くない。熱が出たのは、急に始めた仕事のせいで、疲れが出ただけですよ。何も心配しなくて大丈夫です」

…小林先生の優しい声。

満里奈はもう、ちゃんと完治している。

無理な運動は出来ないが、私生活には何の支障もない。

「…そうですか…良かった」

そう言って溜め息をついた零士は、満里奈の手を両手でつかむと、自分のおでこに当てた。

「…目が覚めて、軽い診察をして、異常がなければ帰れますから。私は、一馬と話をして来ますので」


「…ありがとうございました」

零士は礼を言うと頭を下げる。小林先生も笑顔で会釈すると、病室を出ていった。

…。

小林先生は、廊下に居る一馬を引き連れ人気のない場所に連れてくると、直ぐに一喝した。

「…一馬、お前医者だろ?いくら満里奈ちゃんの病気が完治したとは言え、無理をさせて。どうせ、ずっと、御崎さんと会わせなかったんだろ?満里奈ちゃんを本気で思うなら、満里奈ちゃんの幸せを一番に考えてやれ。今は、二人の邪魔はさせない。一馬の友人として、お前が路を外すところなんて、黙って見てられないから」

「…」

黙りこむ一馬を小林先生は元気ずけようと、肩を叩き、院内の喫茶店に連れていった。
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