俺様社長の溺愛宣言

零士side

マンションに向かう車の中、俺も満里奈も、一言も話さなかった。

だが、ずっと不安そうな顔をしている満里奈を見ていられなくて、握りしめる手をソッと片手で包み込んだ。

…。

マンションに着き、車を停めた。

「…満里奈、着いたぞ」
「…たくない」

「…え?」
「…降りたくない」

そう言うと、ポロポロと涙をこぼし始めた満里奈に驚きつつも、手を引っ張り寄せ抱き締めた。

「…お兄さんの元に帰りたくないのか?」

俺の言葉に頷いた満里奈。

「…満里奈、お兄さんは、満里奈にとって、大事な家族だろ?」

「…そうだけど…でも、あそこに帰ったら、もう二度と、零士さんに会えなくなるんじゃないかって、不安で…もう、離ればなれは嫌です」

そう言った満里奈は、俺をきつく抱き締めた。その手は強いのに、震えていて…

「…じゃあ、うちに来るか?」

俺の突然の提案に、満里奈が顔をあげた。

「…満里奈が安心できるなら、そうすればいい。お兄さんには、俺から連絡しよう」

そう言って微笑めば、満里奈は安心したように、再び俺に抱きついた。

…会っていない間に、満里奈はとても不安な気持ちをずっと抱えていたに違いない。
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