俺様社長の溺愛宣言
俺は、満里奈を抱き寄せて、いつまでも離さないでいると、満里奈と俺のお腹が同時に鳴った。

二人は目を見合わせて、声をあげて笑いだした。

「…そう言えば、何も食べてませんでした。御崎社長も?」

満里奈の言葉に頷けば、満里奈はクスクスと笑った。

「…冷蔵庫の中には何もないからな…ピザでも頼むか」
「…はい」

適当なものを頼んで、二人でそれを食べた。

「…美味しいですね」
「…そうだな」

「…明日は、私が作りますね」

その言葉に、目を見開く。

「…私の料理では、ダメですか?」
「…いや、そうじゃない」

「…御崎社長?」

俺は、困ったように笑って満里奈の左手を握りしめた。

「…社長」
「…手料理、楽しみにしてる」

「…どうしたんですか?どうしてそんなに泣きそうな顔なんですか?」

俺は、深呼吸すると、誰にも言ったことのない事を、話始めた。

「…俺には母親がいない」
「…ぇ」

「…だから、ずっと定期的に変わる家政婦の料理しか食べたことなかったし、大きくなっても外食しかしたことない。好きな女も出来たことないし、手料理なんて作ってもらったこともない」

そう言って、悲しげに微笑めば、俺の手の上に、自分の右手を重ねた満里奈は、優しい笑みを浮かべた。

「…それじゃあ、これからは、愛情たっぷりの手料理、沢山、沢山作りますね」

そう言った。


…何故、こんなことを、満里奈に言ってしまったのか。

…そんなことは分かってる。

満里奈なら、笑わずに、そう言ってくれるような気がしたから。
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