俺様社長の溺愛宣言
「…今夜一晩」

零士の言葉に、一馬と小林先生が零士を見つめる。

「…身の振り方を考えます。満里奈にとって最善の路を」
「…ありがとうございます。宜しくお願いします」

小林先生は零士に、深々と頭を下げた。

一馬は、零士の顔を見ようともしなかった。

…自宅に戻った零士はネクタイを緩め、ドカッとソファーに沈みこむ。

愛してやまない女が、いつ命を失ってもおかしくない状態だと知らされ、平常心なんて保てなかった。

物に当たっても仕方ないのに当たらないと心がどうにかなりそうだった。

「…満里奈…満里奈…どうしてお前は」

そう呟いて、頭を抱えしゃがみこむ。

…助かるかもしれない命を諦めて、自分の傍にいたいと思うなんて。

「…俺は、お前に何もしてやれないのに」

…いや、なにもしてやれないことなんてない。

零士が満里奈にしてやれることはある。

零士は顔をあげ、満里奈の入院する病院に電話をかけ、小林を呼び出した。

…小林は静かに零士の言葉を最後まで聞いた。

「…わかりました…ありがとう御座います。一馬には、私から伝えておきます…はい、では、失礼します」

話が終わり、小林は受話器を置き、溜め息をついた。

…本当に、それでいいのか?

…満里奈にとって、一馬にとって、そして零士にとって、最善の策なのか?

だがしかし、他に方法はなさそうだ。

小林は、満里奈の病室に足を進めた。

ノックし、ドアを開ければ、そこには、満里奈の手を握りしめた一馬がいた。


「…一馬…俺の話をよく聞け」

小林の話を聞いた一馬は目を見開いた。

「…それは断る」
「…満里奈ちゃんのためだ。それだけは目をつぶれ。御崎さんなりの、最後の愛情だ。それがのめないなら、満里奈ちゃんの命はないと思え」


小林の言葉に、一馬はしばらく黙りこみ、小林を再び見た一馬は頷くしかなかった。
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