俺様社長の溺愛宣言
8.俺様社長の大きな手
…長時間のフライトも、体調が崩れることなく無事に終え、アメリカにある、一馬の恩師がいる有名な病院に向かった。

零士は本当にずっと満里奈の傍を離れようとはしなかった。

一馬も、その事に触れることはなかった。

二人の間で交わされた約束は守られていた。

だが、その約束事は、満里奈は知らない。

…簡単な検査を受け、二日後には手術。

「…御崎社長」
「…ん?」

「…お仕事は大丈夫ですか?」

満里奈はずっと心配していた。こうもずっと自分の傍にいたら、仕事なんて出来るわけがなかった。

零士は優しく微笑むと、満里奈の頭を優しく撫でる。

「…仕事は滞りなく進んでる。私が出なければならない火急の仕事も今はない。満里奈は何も心配しなくていい」

「…お兄ちゃんとは」

何故、前のように言いあいがないのか、それも不思議だった。

「…満里奈は心配性なんだな。お兄さんとこんな時に言いあいなんてしないだろ。というか、もう、言いあいなんて二度とない」

「…そうなんですか?」
「…あぁ、だから、気にするな」

…好きな人との2日間は、満里奈にとっても、零士にとっても、欠けがえのないものになった。

…そして迎えた手術当日。

手術室まで、零士は満里奈の手を握っていた。

「…寝ている間に終わるからな」
「…はぃ、終わったらまた、会えますよね」


「…もちろんだ」


満里奈はその言葉に満面の笑みを見せた。

満里奈が、手術室に入った後、一馬が零士の前に現れた。

「…あんたの仕事はここまでだ」
「…満里奈の事、宜しくお願いします」

…手術の無事を見届けた零士の姿は、もう、病院にはなかった。
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