俺様社長の溺愛宣言

零士side

…両手を握りしめ、ただただ手術の無事を祈り続けていると、手術中のランプが切れた。

ふと、窓の外に目を向ければ、朝日がいつの間にか、薄暗くなっていた。

執刀医が出て来て、俺はその人に駆け寄った。

『満里奈は?手術はどうだったんですか?』

英語で問いかける、と。

執刀医は微笑んだ。

『一時は危ない状態になりましたが、無事に手術は終わりました。後は、食事と静養をしっかりとれば、退院できますよ』

『…ありがとうございました』

俺は涙をこらえながら、執刀医に深々と頭を下げた。

頭をあげると、次に、ベッドで眠る満里奈と共に、助手で入っていた一馬が出てきた。

「…まだいたのか?」
「…手術の無事を見届けたら帰る約束だったはずですが」

「…そうでしたね、『満里奈をICUに』…私も一言貴方に礼を言わなければならないですね」

そう言った一馬は、零士に、深々と頭を下げた。

「…満里奈を説得し連れてきてくださってありがとうございました」

…その声は、微かに震えていた。

「…私は、出来ることをしたまでです。これからは、お兄さん、貴方が満里奈を守る番です。私はこれで失礼します」

…本当は、満里奈の目が覚めるとき、手を握っててやりたかった。

だがそれでは、いつまでも未練がましくなる。満里奈から離れられなくなる。

俺は後ろを振り返ることもなく、病院を出た。

「…渡辺さんのオペは無事にすまれましたか?」

外で、秘書である中島が待っていて、出てきた俺に声をかけてきた。

「…無事に終わった。…すまなかったな、長いこと会社を留守にして、帰ったら、休まず働くから」

「…」
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